東京大学

Department of Systems Innovation,School of Engineering,
The University of Tokyo

  

 

専攻概要

工学知を統合し、自然や社会と調和のとれた革新的な「システム」の実現を目指す「システム創成学専攻」。 専攻長から進学を希望する皆様へのメッセージ、システム創成学専攻の教育理念、専攻理念をご案内いたします。

 

専攻長からのメッセージ

システム創成学専攻は、東京大学創成期に開設された複数の学科を母体に組織された専攻であり、多様な工学要素を融合させ、新しい価値を生み出すシステムを基盤にして、それぞれの専門分野で社会貢献を進める活動を行っています。こうした学術的実践のことをシステム創成学と呼びます。

 

近年、人類が開発したテクノロジーは劇的な成長を遂げています。AI・量子・通信等を中心とした新技術は単に私たちの生活を便利にするというだけではなく、現代社会の在り方そのものを大きく進化させています。AIの進化はすでにご存じかと思いますが、5Gや衛星通信をはじめとする通信技術の進化もSociety5.0と呼ばれるサイバーフィジカル空間の融合をさらに深化させています。また量子コンピューティングの圧倒的な計算能力は今後の科学技術の発展に大きく寄与していくと期待されます。システム創成学専攻ではこれらのツールを研究するだけではなく、有効に活用することでさらなる新しい技術の発展に寄与することが期待できます。

 

システム創成学専攻では、地球と人類文明の関わり方の転換についても扱っています。ゲリラ豪雨や異常高温など頻発する異常気象は人類が地球環境そのものに大きな影響を与えていることを意味しているでしょう。こうした大自然からのフィードバックを前に、今人類はカーボンニュートラル社会への転換を目指し、変革行動を始めています。私たちが日々大量に消費しているエネルギーを転換する動きはその代表格ですが、人類が生き延びるため、様々な具体的な方法を考えています。

 

また、新型コロナなどの新たな感染症により、余儀なくされた社会形態変化、加えて民族間の対立や覇権争いによる紛争や戦争が終焉を迎えることはなく、私たちの暮らしにおけるエネルギー、資源、食料や全ての物資のライフラインが途絶される危険性と隣り合わせであることを実感させられています。今私達が生きていく社会はこれ以上の複雑さを有しています。個々の科学技術が発展していけば良い時代はとうに終わりを迎えており、単一指標に基づく効率化や精度の向上ではなく、高度にデザインされた社会を構築することが要求されています。

 

このような現代社会において、科学技術や社会環境の発展の実現には、エネルギー・資源などに代表される地球環境やSociety5.0における課題の最前線でシステム創成を行うことが求められています。広い分野を少しずつ知っているジェネラリストが集まっても、特定の分野に強いスペシャリストだけが集まってもイノベーションには結びつきません。また、異分野の多くの専門家を一つのグループに単に組織するだけでは、軋轢を生むことも少なくありません。深い専門知識や経験を持っていて、さらに全体的な視野から正しい解に導くことのできる人材が必要です。現在は社会の大きな転換点であり、これを機に様々な分野でシステム創成がなされ新産業の創出や既存の産業の新陳代謝といった大きな変化が生まれることが期待されています。システム創成学専攻では高いレベルの問題意識を持ちながら多分野の最新の研究成果を組み合わせた知見を社会へ還元するとともに、全体を眺める視野を持つ人物を育成していくことを目標としています。

2025年4月
東京大学大学院工学系研究科
システム創成学専攻 専攻長
鳥海 不二夫

システム創成学専攻の専攻理念

システム創成学専攻の専攻理念

新たな教育・研究を展開

システム創成学専攻では、人間、人工物、自然をとりまく様々な現代的課題に立ち向かえる人材を輩出するために、ものごとを多面的、俯瞰的視点から捉えるシステム科学を基礎として、専門領域に細分化された従来の工学知を統合し、自然や社会と調和のとれた革新的なシステムの実現のための原理と方法論に関する教育・研究を展開していきます。

新たな価値を創造

急速にグローバル化し、加速的に複雑化している現代社会において噴出する様々な課題を解決するためには、ものごとを多面的、俯瞰的視点から捉えるシステム思考が重要となってきています。 すなわち、対象を構成する基本要素を抽出、分析するといった旧来型の工学的貢献ではなく、要素間の関係性や相互作用を考慮しながら総合化し、個別の専門領域で培われた知識や技術を統合することによって、環境問題や安全安心社会の実現等、現代社会が直面する課題に対して具体的なソリューションを提供し、新しい価値の創出や革新的にシステムをイノベーションすることが新たに工学に求められているのです。 例えば、自然と社会、技術との調和を実現するためには、工業製品等の人工物ばかりでなく、ヒューマンウェア、マネジメント、サービス、社会制度等といった人工物を取り巻く環境への関与も必要となってきます。さらに、個別の人工物の設計製造を追求するだけでなく、それらの人工物が社会に与える影響や合理的な実装方法を考慮する重要性も日々増しています。また、個別の製品価値だけでなくそれらを取り巻く社会や環境の仕組みを全体的に再設計することで、他の追随を許さない総合的な価値を創出する可能性も期待されます。

新たな分野を開拓

工学が社会の期待に応え活躍の場をますます拡大していくために,システム創成学専攻は、工学知の統合、システム思考をベースに自然システム、人工物、社会システムの機能的融合を目指す工学の新分野を開拓していきます。

研究分野

システム創成学専攻の教育理念

システム創成学専攻の教育理念

システム創成学専攻の教育目的

システム創成学専攻では、俯瞰的視点とシステム思考に基づき戦略的に意思決定を行う能力、特定専門分野におけるアナリシス能力を備え、俯瞰的視点から先端的要素技術の開発ができる人材、革新的なシステムの創出ができる人材の養成を教育目的とします。 修士課程においては、特定工学分野の基礎が確立できているとともに、システム科学の概念と方法論について十分に理解し、社会の各分野でシステム創成学の専門家として活躍できる人材の養成を主眼とします。 博士課程においては、さらに現実世界の中から自ら課題を発見し、その解決に向けてプロジェクトを企画立案し、そのプロジェクトのメンバーとして自己の専門知識と技能を有機的に活用して解決する能力を有するシステム創成学の高度専門家を養成するとともに、その一連のプロセスを科学的に分析し普遍化することのできる研究者を養成します。

システム創成学専攻のコアコンピタンス

システム創成学専攻では、以下の4つの力を育みます。

  • 問題の本質を領域横断的、俯瞰的、かつ体系的に捉えるシステム思考能力。
  • 複雑な現実問題を数理的、実証的アプローチが適用できる形にモデル化して解決する能力。
  • 工学の特定専門分野において専門家として認知されるに十分な知識と技能。
  • 自己を磨きつつ社会の中で人と関わりながら活躍できる人間力。

時間割(PDF)

期待される卒業生像

期待される卒業生像

卒業生の進路としては、ハード、ソフト、サービスを問わず産業界において新製品・新規事業の企画立案や、設計、生産、運用、管理の計画、実施に責任を有する指導的技術者・管理者、公共政策等の社会システムのデザインや決定、実施に責任を有する行政スペシャリスト、システム創成学や学際的学術分野の研究者等が想定されます。

卒業生の進路

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