東京大学

Department of Systems Innovation,School of Engineering,
The University of Tokyo

 

専攻概要

工学知を統合し、自然や社会と調和のとれた革新的な「システム」の実現を目指す「システム創成学専攻」。 専攻長から進学を希望する皆様へのメッセージ、システム創成学専攻の教育理念、専攻理念をご案内いたします。

専攻長からのメッセージ

専攻長からのメッセージ

システムズ・イノベーターという人生

システム創成は、英語では Systems Innovationと称しています。システム(System)とは、相互に影響しあう様々な要素からなり、まとまりのある振る舞いを生み出すような構成のことです。つづく「イノベーション(Innovation)」 は20世紀初頭にJ.シュンペーター (Joseph Schumpeter)が初めて導入した概念で、 財、生産方法、市場、販路、原料等およびその供給源、組織を新しくすることによって新たな事業や市場を生み出すことを意味します。彼の示した neue Kombination(エレメントの新しい組み合わせ)はイノベーションの方法だと思えばよいでしょう。イノベーションという言葉はそもそも、システムを創り出すことを意味するといえるでしょう。
みなさんは、 イノベーションというとどんなことをイメージするでしょうか? 少し古い例ですが、私はトーマス・エジソン(Thomas Edison)とジョセフ・スワン (Joseph Swan)の比較を授業で出すことがあります。

トーマス・エジソン(Thomas Edison)

ジョセフ・スワン (Joseph Swan)

エジソンとスワン(From Wikimedia Commons, the free media repository)
出典:Wikipedia

二人の顔写真を出して問います「白熱電球を先に作ったのはどちらですか?」。多くの学生は、エジソンの写真を指します。でも、これは不正解。 エジソンは1874年にカナダ人から炭化フィラメントの特許を買い 1877年に白熱電球の実験を開始していますが、 スワンはその前に白金での電球実験を成功させ、 紙を炭化したフィラメントを用いた研究開発に進んでいます。 にもかかわえらず、なぜエジソンが電球の発明者だと思う人が多いのでしょうか?
当時、日本は大政奉還、廃藩置県という大変革期にありました。日本人の目に、黒船で登場し日本に変革をもたらした米国人の中でも科学技術の最先端を率いていたエジソンという人物は世界の技術の先端の先端だったことでしょう。 エジソンが当時の伊藤博文総理と槇村京都知事を経由して石清水八幡宮の竹を大量に手に入れてフィラメントを作り、電灯を200時間も点灯させることに成功した背景にこの明治の日本があったことは確かです。この成功の先に、人々が夜も明るい生活を営む社会が生み出されました。もしエジソンが、世界の社会動向を見て伊藤博文の助けを借りる ことにした着想力を持たず、単独での発明や事業化ばかり考えて他者を取り入れることを 拒んでいたり、あるいは電球だけを売っていたら、現代の私たちの電気のある生活の普及はずいぶん遅れていたかも知れません。
同様のことは、情報機器の業界や人工知能の分野でも見られます。 PCの父といわれるアラン・ケイ(Alan Key)はまだデスクトップのパソコンもなかった1968年に、薄くて軽い計算機のモックアップを見せ、将来はこんなマシンができて子供でも操って教育等の用途に使われるだろうと予言しました。このアイデアを後にケイ本人から聞いて iPodと結合し、iPadという大ヒット商品にしたのはスティーブ・ジョブズ(Steve Jobs)でした - ケイが思い描いた教育や医療に情報技術を用いるニーズが社会に広く根差した現実化したこの21世紀社会において。また、日本のNHK技研にいた福島邦彦氏は1970年代にネオ・コグニトロン (Neo Cognitron)を発表してその改良を加えていましたが、これとほぼ同じ構造を持つ深層学習技術を大量の画像データに適用したカナダのグレゴリー・ヒントン(Geoffrey Hinton)が、計算機科学のノーベル賞といわれるチューリング賞を受賞しました。その背景には計算機の発達だけではなく、 Webの登場によって膨大で多様な画像データと、そこから 「親子が移っている」「テディーベアと子供」 のような高度な概念を学習する機械を求めた人々のニーズがありました。 学生の皆さんが目指すのは、どのタイプの人でしょうか? あるいはこれらのいずれでもない全く違うタイプの人でしょうか。 また、当専攻の研究者とのコラボレーションを望む人は、どんな目標をもっているでしょうか。 どのような人生を志すかは皆さんの自由です。でも、 その人生は必ずシステムにかかわり、システムを生み出しています。 当専攻では、ものごとを多面的、俯瞰的視点から捉えるシステム科学を基礎として 従来の工学知を統合しつつ、自然や社会と調和のとれた革新的なシステムたちを生み出す原理と方法論を作り出す研究と教育と通じて、皆さんが人間、人工物、自然をとりまく様々な現代的課題に立ち向かうシステムズ・イノベーターに成長する道づくりをめざしています。

2020年4月
東京大学大学院工学系研究科システム創成学専攻
専攻長 大澤 幸生

システム創成学専攻の専攻理念

システム創成学専攻の専攻理念

新たな教育・研究を展開

システム創成学専攻では、人間、人工物、自然をとりまく様々な現代的課題に立ち向かえる人材を輩出するために、ものごとを多面的、俯瞰的視点から捉えるシステム科学を基礎として、専門領域に細分化された従来の工学知を統合し、自然や社会と調和のとれた革新的なシステムの実現のための原理と方法論に関する教育・研究を展開していきます。

新たな価値を創造

急速にグローバル化し、加速的に複雑化している現代社会において噴出する様々な課題を解決するためには、ものごとを多面的、俯瞰的視点から捉えるシステム思考が重要となってきています。 すなわち、対象を構成する基本要素を抽出、分析するといった旧来型の工学的貢献ではなく、要素間の関係性や相互作用を考慮しながら総合化し、個別の専門領域で培われた知識や技術を統合することによって、環境問題や安全安心社会の実現等、現代社会が直面する課題に対して具体的なソリューションを提供し、新しい価値の創出や革新的にシステムをイノベーションすることが新たに工学に求められているのです。 例えば、自然と社会、技術との調和を実現するためには、工業製品等の人工物ばかりでなく、ヒューマンウェア、マネジメント、サービス、社会制度等といった人工物を取り巻く環境への関与も必要となってきます。さらに、個別の人工物の設計製造を追求するだけでなく、それらの人工物が社会に与える影響や合理的な実装方法を考慮する重要性も日々増しています。また、個別の製品価値だけでなくそれらを取り巻く社会や環境の仕組みを全体的に再設計することで、他の追随を許さない総合的な価値を創出する可能性も期待されます。

新たな分野を開拓

工学が社会の期待に応え活躍の場をますます拡大していくために,システム創成学専攻は、工学知の統合、システム思考をベースに自然システム、人工物、社会システムの機能的融合を目指す工学の新分野を開拓していきます。

研究分野

システム創成学専攻の教育理念

システム創成学専攻の教育理念

システム創成学専攻の教育目的

システム創成学専攻では、俯瞰的視点とシステム思考に基づき戦略的に意思決定を行う能力、特定専門分野におけるアナリシス能力を備え、俯瞰的視点から先端的要素技術の開発ができる人材、革新的なシステムの創出ができる人材の養成を教育目的とします。 修士課程においては、特定工学分野の基礎が確立できているとともに、システム科学の概念と方法論について十分に理解し、社会の各分野でシステム創成学の専門家として活躍できる人材の養成を主眼とします。 博士課程においては、さらに現実世界の中から自ら課題を発見し、その解決に向けてプロジェクトを企画立案し、そのプロジェクトのメンバーとして自己の専門知識と技能を有機的に活用して解決する能力を有するシステム創成学の高度専門家を養成するとともに、その一連のプロセスを科学的に分析し普遍化することのできる研究者を養成します。

システム創成学専攻のコアコンピタンス

システム創成学専攻では、以下の4つの力を育みます。

  • 問題の本質を領域横断的、俯瞰的、かつ体系的に捉えるシステム思考能力。
  • 複雑な現実問題を数理的、実証的アプローチが適用できる形にモデル化して解決する能力。
  • 工学の特定専門分野において専門家として認知されるに十分な知識と技能。
  • 自己を磨きつつ社会の中で人と関わりながら活躍できる人間力。

2020年度 時間割(PDF)

期待される卒業生像

期待される卒業生像

卒業生の進路としては、ハード、ソフト、サービスを問わず産業界において新製品・新規事業の企画立案や、設計、生産、運用、管理の計画、実施に責任を有する指導的技術者・管理者、公共政策等の社会システムのデザインや決定、実施に責任を有する行政スペシャリスト、システム創成学や学際的学術分野の研究者等が想定されます。

卒業生の進路

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