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⼈⼯物ネットワーク
「破壊」は材料や構造の代表的な力学的極限状態です。このため、これらの極めて複雑な力学現象を深く理解し、適切に制御することは工学における最も基本的かつ重要な課題の一つです。破壊現象の支配因子やメカニズムは、構造または部材レベルの巨視的スケールから結晶粒あるいは原子レベルの微視的スケールまで幅広いスケールにまたがっています。さらに、これらの支配因子やメカニズムには、流体力学・熱力学・電磁気学など、材料力学の範疇を超えた物理が関与することさえありえます。柴沼研究室では、破壊現象を記述するために必要な複数の支配因子とメカニズムを橋渡しする全く新しいコンセプトのマルチスケール/マルチフィジックス・モデルを提案し、これまで不可能であった破壊現象を定量的に説明可能な革新的な理論体系を構築することを目指しています。
有限要素法(FEM)は、応力分布や変形といった構造体の力学挙動を解析するための極めて強力な手法です。しかしながら、有限要素法は本来的に連続体を対象とした積分方程式の離散化を基礎とした数値解析手法であり、破壊現象のような強い不連続性を包含する問題への適用には本質的に適していません。柴沼研究室では、重合メッシュ法(S-version FEM; S-method)や拡張有限要素法(eXtended FEM; XFEM)などを基礎として、有限要素法で用いられる近似の考え方を一般化・拡張することで、有限要素法の構造解析手法としての長所を維持しつつ、複雑な破壊現象を高精度かつ高効率にシミュレート可能な革新的な高性能有限要素法の開発を進めています。
破壊現象を適切に説明・再現するモデルを構築するためには、実験・観察を通して実際の現象を深く理解することが極めて重要です。しかしながら、従来の実験や観察方法では、破壊の本質的なメカニズムのある側面しか捉えることができないのが現状です。柴沼研究室では、最新の画像解析技術あるいは数値シミュレーション技術と実験を組み合わせることで、これまで観察・計測が不可能とされた破壊現象の新たな知見を得るための実験・観察手法の設計に取り組んでいます。